妊娠・出産の際に「b型肝炎」という病気を知る方は多いでしょう。日本産科婦人科学会の診療ガイドラインでは、すべての妊婦さんに対してb型肝炎の感染の有無を検査するように決められています。b型肝炎に感染していると、様々な肝臓の病気にかかりやすくなります。

感染を防ぐために、妊婦さんや周囲の人が知っておきたいことを紹介します。

b型肝炎はどんな病気?

b肝炎は、b型肝炎ウィルスに感染することでかかる病気です。日本国内の感染者数は、約150万人といわれています。慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんなどの肝臓の病気の原因となるウィルスです。肝臓がんの原因のおよそ15%が、b型肝炎ウィルスへの感染によるものであるとされています。

成人してから感染した場合は、多くの人が多少のだるさを感じる程度で、無症状のまま治癒することがほとんどです。これを「一過性感染」といいます。b型肝炎ウィルスは感染してもほとんど自覚症状がないのが特徴です。

ただし一過性感染者の1~2%は重症化して、劇症肝炎を発症することがあります。これに対して免疫機能が未熟な幼少期、特に生後間もない時期にb型肝炎に感染すると、ウィルスが生涯にわたって体内に住み続ける状態になってしまいます。

これを「持続感染」といい、持続感染者は「キャリア」と呼ばれます。生涯無症状のまま過ごすキャリアもいれば、肝硬変や肝がんに症状が進行するキャリアもいます。成長して免疫機能が高くなってくると、ウィルスを追い出そうとして肝臓全体が攻撃され、肝臓の機能障害の症状が出る可能性が高いのです。

一度b型肝炎キャリアになると、ウィルスを体から追い出すことはできません。肝臓の状態に異常がないか、定期的に調べておく方が安全です。そしてなるべく肝臓に負担をかけないように飲酒や食生活などに注意を払うことも必要です。

また自覚症状がなくても、周囲の人間にウィルスを感染させる可能性があるため、自分がキャリアであるかどうかを知っておくことは大切です。

b型肝炎ウィルスは、何が原因で感染するの?

b型肝炎ウィルスは、主に血液・体液を介して感染します。インフルエンザのように空気感染するウィルスではありません。性交渉、輸血、臓器移植など、b型肝炎ウィルス感染者の血液や体液を、直接体内に取り込むことが主な感染原因です。

過去に幼児の集団予防接種において、注射針の使い回しが行われていたため、b型肝炎ウィルスのキャリアが増加しました。現在約150万人のキャリアのうち、およそ30%が集団予防接種が原因であるとされています。

幼児期の集団予防接種は1988年頃まで行われていたので、出産を控えている方も多い世代にあたります。

b型肝炎ウィルスと妊婦さんの関係

b型肝炎ウィルスのキャリアである女性が妊娠し、何の対策もとらないまま出産すると、子供がb型肝炎に「母子感染」する可能性は約30%あります。出産時に母親の血液などが子供に触れるためです。新生児は免疫機能が未熟なため、ウィルス感染すると持続感染し、b型肝炎キャリアとなります。

キャリアとなった子供は、ウィルスに感染していない人に比べて、将来肝臓系の病気にかかる可能性が高くなります。また幼児がキャリアとなる原因は、出産する女性だけの問題ではありません。幼児に多く触れ合う父親や祖父母、集団保育などから、血液による感染がないとはいえません。

妊婦だけではなく、家族全員が自分がキャリアであるかどうかを把握しておく必要があります。b型肝炎ウィルスへの対策として、1.妊婦と家族全員がキャリアであるかどうかを知る2.妊婦がキャリアであれば、出産時に感染防止策をとる

3.妊婦がキャリアでなくても、子供に幼児期にb型肝炎ワクチンを接種するこの3つが重要になります。妊婦がキャリアの場合は、出産時に医療機関によって感染を防ぐ対策が行われることになります。妊婦がキャリアでない場合でも、周囲の人間から感染する可能性はゼロではないので、ウィルスに対して無防備な状態にはしておかない方がよいでしょう。

血液検査で分かる、b型肝炎ウィルスへの感染

日本産科婦人科学会のガイドラインでは、すべての妊婦に対して、妊娠初期の段階で血液採取によるスクリーニング検査を行うよう指示しています。b型肝炎と共に、HIVや風疹など新生児に大きな影響を与えるウィルスについて検査するものです。

もし血液検査の結果、b型肝炎ウィルスのキャリアであることが判明した場合は、医療機関が感染防止策をとります。キャリアである自分自身を治療することはできないため、普段通り健康管理に気を付けることになります。

検査をして結果を知ることを不安に思う方もいるかもしれません。ですが何も知らないまま感染させてしまうことを避けるため、子供の将来の健康のため、妊娠時の血液検査は必ず受けましょう。

きちんと妊婦検診に通っていれば、受け損ねることはありません。

「b型肝炎がうつるのか分からない方へ」

b型肝炎の母子感染を防ぐには

妊娠時の血液検査の結果、b型肝炎のキャリアであると分かると、新生児に対して感染防止対策がとられます。具体的には、HB免疫グロブリンとb型肝炎ワクチンの接種になります。HB免疫グロブリン…出産後48時間以内、生後2か月の計2回接種

b型肝炎ワクチン…生後2・3・5ヶ月の計3回

b型肝炎の母子感染を防ぐ対策は、出産の直後から生後6ヶ月まで続きます。

長期間にわたる上に、産科と小児科をまたぐことになります。出産前から母子感染防止のための知識を身につけておくことと、不明な点がないように医師や看護師によく確認をしておくことが大切です。不安な場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師などにも相談することができます。

b型肝炎ワクチンの予防接種について

b型肝炎ワクチンは必ず接種する必要があるのでしょうか?妊娠時の血液検査で母体がキャリアではないと判明していても、その後子供がb型肝炎に感染しないと決まったわけではありません。特に幼少期に周囲の人間から感染すれば、キャリアになる可能性が高くなります。

子供が将来、輸血や臓器移植などの治療を受けることになる可能性も否定できません。b型肝炎ワクチンは、2016年10月から定期接種(公費によって無料で出来る予防接種)になりました。

2016年の4月1日以降に生まれた赤ちゃんは、無料で接種することができます。

生後2か月から3回に分けて行います。

定期接種になると、自然とスケジュールに組み込まれるので、受け忘れることは少なくなります。b型肝炎ワクチンが任意接種(自ら希望して、自費で受ける予防接種)だった時期は、ワクチンを接種していない人がほとんどです。

b型肝炎は、キャリアになると付き合いの長い病気です。母子感染がなくとも、周囲からの感染リスクに備えて、なるべく早く接種することが望ましいとされています。また感染させる側にならないようにするためにも、予防接種は大切です。